GRACE  仲間の手記


家族に伝えたいこと/コウスケ


  我が家の最大の悲劇は2008.6.6に最愛の息子○○を自死させてしまったことです。明るくて活発な彼に何の心配もなく、むしろ将来を期待をしていました。ところが、彼が20歳頃から薬物に依存し2007.11月に入院をしました。それから私達夫婦は精神保健福祉センターで薬物依存症の勉強を始めました。最初は手を出した本人に問題があると思っていました。ところが家族会等いろいろなところで勉強していきますと、根本には本人が生きずらさを感じそれとどう自分が向き合って生きて行けばいいのか分からず苦しんできたことが分かり始めました。思春期前までは周囲と子供同士なんとか交わっていくことが出来ましたが、思春期になり自我の確立をする時期になり周囲と自分の違いを感じ始め、どう対処していけばいいのかが分からず葛藤が始ったのだと思います。高校に入り暴走族仲間との付き合いの中に自分の居場所を見つけたのでしょう。しかし、卒業後暴走族の仲間がバラバラになり本人は自分の居場所が分からなくなり、薬物を通して仲間意識を感じのめり込んでいったものと思います。


 持って生まれた気質というものがありますが、元来気持が優しく思いやりもあったんです。私達は彼のそうした資質を分かってあげて、伸ばしてあげることが出来たらこんな悲惨な結末にはならずに済んだことでしょう。そのことを考えると、とても心が痛みます。私が墓場まで持っていかなければならない大きな課題です。彼が薬物に手を出した事が発覚した当初は、何とか止めさせることだけを考え必死に取り組んでいました。その過程は私達と共に生活をしてきた弟が身近にいて一番分かっていることでしょう。また彼の助けが有って私達は精神的にも助けられ、この難題に立ち向かってこれたのです。このことは改めて感謝をしています。ありがとう。


 子育ては夫婦が協力してするものです。確かに男は外で働き社会のストレスを受け、家庭に帰って子育てのことまでと感じるかもしれません。しかし将来に禍根を残さないためには今が大切なんです。貴方達(既に独立している息子と娘)に大切なことは、自分たちの子供を親子という縦の関係ではなく家族という小さな社会の縮図の中で対等関係で有ること。そして良好な夫婦の関係を子どもに示すことで、そこから子供は情緒的安定とコミュニケーションの取り方を学んで行くんです。厳しく育てることが正しい子育てとは言えないんですね。喧嘩ばかりしていたり、口をきかなかったりの夫婦関係からは子供たちは会話の術を学ぶことができずに成長していきます。それらの家族関係の諸問題が思春期頃になって引きこもりや不登校という現象として現われてくるんです。決して突発的に発生する事件ではないんです。


 今の社会は縦社会の勝ち組負け組という発想の競争社会では、人と人を結ぶ絆を断ち切ってきました。社会の最少単位家族の絆を大切に風通しの良い家族関係を築いて下さい。私達の多くの過ちを、○○君は自らを犠牲にしてまで私達に教えてくれました。彼の死を無駄にせず貴方達は、私達から受けた間違った感情表現の方法に気付き改めることで孫たちへの世代間連鎖を断ち切って下さい。



 ーーーコウスケーーー

2009年 8月15日